15-1
次の記述のうち、誤っているものはどれか。
15−2
わが国における紛争解決制度についての記述として、正しいものはどれか。
15−3
次の憲法条文の例のうち、権利の保障のあり方について、他とは異なる考え方に基づくものはどれか。
15−4
次の文章は、ある最高裁判決の一部である。そこにいう検閲の定義にあてはまると考えられる事例は、ア〜オのうち、いくつあるか。
憲法21条2項にいう「検閲」とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す。
ア 税関で、関税定率法における輸入禁制品の検査の結果、わいせつ表現を含む書物の輸入を禁止すること
イ 当事者の申請に基づき審理した上で、裁判所が、名誉毀損表現を含む出版物を、仮処分により事前に差し止めること
ウ 高等学校用「政治・経済」の教科書として出版しようとした書物につき、文部科学省で検定し、不合格の処分を行うこと
エ メーデー式典に使用する目的で出された、公共の用に供されている広場の利用申請に対して、不許可の処分を行うこと
オ 総務省で、出版前に書物を献本することを義務づけ、内閲の結果、風俗を害すべき書物については、発行を禁止すること
15−5
次の記述のうち、刑事手続に関する日本国憲法の条文の字句に照らして、誤っているものはどれか。
15−6
衆議院の解散に関する日本国憲法の条文に照らして、次の記述のうち誤っているものはどれか。
15−7
日本国憲法の条文およびその解釈によって導かれる「最高裁判所の機能」として、て、誤っているものはどれか。
15−8
情報公開法(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)は、何人にも「行政文書」の開示請求権を認める(第3条)。開示請求は、開示請求書を行政機関の長に提出してしなければならないが、次に揚げる事項(ア〜オ)のうち、同法第4条が開示請求書の記載事項として要求しているものは、いくつあるか。
ア 開示請求をする者の氏名または名称および住所または居所ならびに法人その他の団体にあっては代表者の氏名
イ 開示請求をする者の本人性を証する書類
ウ 行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項
エ 当該行政文書の開示を請求する理由
オ 開示請求に対して決定がなされるべき期限
15−9
行政に関する公法と私法の関係についての次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らして妥当なものはどれか。
15−10
国家賠償法についての次の記述のうち、判例に照らして妥当なものはどれか。
15−11
訴訟を提起することができる期間が法律によって定められている場合、それを「出訴期間」という。行政庁の処分をめぐる各訴訟とその出訴機関の原則に関するア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 行政事件訴訟法によると、無効等確認訴訟の出訴期間は、処分があったことを知った日から3か月以内である。
イ 行政事件訴訟法によると、取消訴訟の出訴期間は、処分があったことを知った日から3か月以内である。
ウ 国家賠償法によると、国家賠償請求訴訟の出訴期間は、原因となる行為のあったことを知った日から3か月以内である。
エ 行政事件訴訟法によると、不作為の違法確認訴訟の出訴期間は、申請をした日から3か月以内である。
オ 行政事件訴訟法によると、義務づけ訴訟の出訴期間は、申請をした日から3か月以内である。
15−12
次の手続的権利には、行政手続法に定められているものと行政不服審査法に定められているものとがある。そのうち、両法に定められているものは、いくつあるか。
ア 関係職員への質問
イ 反論書の提出
ウ 証拠書類等の提出
エ 物件の提出要求の申立て
オ 検証の申立てと立会い
15−13
行政手続法が施行された時点(平成6年10月1日)では、同法と地方自治法の関係は希薄であった。ところが、いわゆる地方分権一括法(「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」)により改正された新地方自治法(平成12年4月1日施行)には、第245条以下に、行政手続法と極めて似かよった規定がいくつか置かれることになった。
次のア〜オのうち、行政手続法と地方自治法が共通して定めを設けている事項は、いくつあるか。
ア 申請拒否処分の際の理由の提示
イ 許認可に際しての標準処理機関の作成・公表
ウ 許認可の取消しに先立つ聴分の実施
エ 許認可の取消しに際しての書面主義
オ 届出に関する到達主義
15−14
次の記述のうち、行政手続法上正しいものはどれか。
15−15
行政不服審査法による不服申立てをめぐる次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−16
ア〜オの記述のうち、行政不服審査法に照らして誤っているものは、いくつあるか。
ア 不服申立てを審査する行政庁は、申請した利害関係人に、参加人として不服申立てに参加することを許可する権限を有する。
イ 不服申立人は、不服申立てを審査する行政庁に、必要と考える参考人の事実陳述を求めるよう申し立てることができる。
ウ 不服申立人は、不服申立てを審査する行政庁に、処分の理由となった事実を証する書類等の閲覧を正当な事由があれば求めることができる。
エ 不服申立てを審査する行政庁は、審査の必要に応じて、書類その他の物件の所持人にそれらの提出を命ずることができる。
オ 不服申立ての審理は書面によるのが原則で、不服申立人に口頭意見陳述の機会を与えるのは、不服申立てを審査する行政庁が必要と認めた場合である。
15−17
次の記述のうち、誤っているものはどれか。
15−18
地方公共団体のいわゆる100条調査権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−19
地方自治法上の住民訴訟による差止め請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−20
地方自治法上の法定受託事務に係る処理基準に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−21
ア〜オの記述のうち、法人税法における扱いとして正しいものはいくつあるか。
ア 日本銀行は「公共法人」である。
イ 日本放送協会は「公益法人等」である。
ウ 日本郵政公社は「普通法人」である。
エ 行政書士会は「公益法人等」である。
オ 預金保険機構は「共同組合等」である。
15−22
日本の所得税に関する次の説明のうち、正しいものはどれか。
15−23
ア〜オのうち、行政書士法上で行政書士の業務として明示的に定められていないものは、いくつあるか。
ア 許可等の申請にともなう意思表示について代理すること
イ 行政「聴聞」の代理人になること
ウ 行政「不服申立て」の代理人になること
エ 契約の締結について代理すること
オ 行政書士が作成できる書類の作成について相談に応じること
15−24
行政書士法に基づく行政書士としての登録に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−25
ア〜オのうち、行政書士法上、その違反に対し刑事罰が定められていないものはいくつあるか。
ア 行政書士が、日本行政書士会連合会の会則を守らなかったこと
イ 行政書士が、正当な事由なく業務の依頼を拒むこと
ウ 行政書士が、業務を行うための事務所を二か所以上設けること
エ 行政書士が、その業務に関する帳簿を備えなかったこと
オ 行政書士が、都道府県知事による事務所への立入り検査を拒んだこと
15−26
ア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 行政書士は、法律の明記するところにより、行政書士事務所に勤務する補助者について所属の行政書士会に届け出なければならない。
イ 行政書士の補助者が、業務上知りえた秘密を漏らしてはならないことは、法令上定められてはいない。
ウ 行政書士は、その補助者に業務の執行を補助させたときは、法律の定めに基づき、その備えつけ帳簿にその旨を記載しなければならない。
エ 行政書士事務所にその報酬の掲示をするにあたっては、法令の規定に明記されるとおり、補助者に配分する報酬部分について示しておかなければならない。
オ 行政書士事務所に勤務する補助者は、行政書士の資格を有する者には限られない。
15−27
Aが以下のような状況で契約した場合、大審院ないし最高裁判所の見解に立つと、本人に契約上の効果が帰属することになるものはどれか。
15−28
Aは、BからB所有の絵画を預かっている。最高裁判所の判例によれば、次の記述のうち妥当なものはどれか。
15−29
Aは不動産会社Bと、BがC工務店に注文して建築させた建売住宅を購入する契約を締結した。次のア〜オとa〜eの組合せとして妥当なものは、1から5のうちどれか。
ア この建売住宅が売買契約成立後Aへの引渡し前に、Bの責に帰すべからざる事由によって火災で半焼してしまった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。
イ この建売住宅にCの手抜き工事による欠陥があって、漏水のためAの大切にしていた絵画が損害を受けた場合、AはCに対していかなる請求ができるか。
ウ この建売住宅のために設定されているはずの通行地役権が設定されていなかった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。
エ この建売住宅が売買契約成立後Aへの引渡し前に、Bの従業員の過失によって火災になり半焼してしまった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。
オ この建売住宅にCの手抜き工事による欠陥があって、通行人Dがケガをしてしまった場合、DはCに対していかなる請求ができるか。
a 瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
b 危険負担に基づく代金減額請求
c 債務不履行に基づく損害賠償請求
d 危険負担に基づく解除
e 不法行為に基づく損害賠償請求
15−30
Aには、妻Bと子C・D・Eがいる。相続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−31
戸籍に係わる届出は、報告的届出と創設的届出とに大別される。次のア〜ケの届出のうち創設的届出は、いくつあるか。
ア 死亡届
イ 婚姻届
ウ 任意認知届
エ 失踪宣告取消届
オ 婚姻取消届
カ 協議離婚届
キ 養子縁組届
ク 国籍得喪届
ケ 後見開始届
15−32
住民基本台帳法に関するア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア 選挙人名簿の登録は、住民基本台帳に記載されている者で選挙権を有するものについて行われる。
イ 市町村長は、その市町村の区域内に住所を有する者について、その戸籍を単位として、戸籍の附票を作成しなければならない。
ウ 住民基本台帳法による届出は、書面または口頭によってしなければならない。
エ 戸籍の附表の記載、削除または記載の修正は、職権で行われる。
オ 住民基本台帳法の規定により市町村長がした処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求の裁決を経た後でなければ、提起することができない。
15−33
商行為または商人の行為に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−34
株式会社の取締役に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
15−35
ア〜オの記述のうち、妥当でないものはいくつあるか。
ア 労働契約には原則として1年以上の期間を定めることはできないが、満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約にあっては、3年の期間を定めることができる。
イ 解雇が解雇権の濫用により無効であった場合でも、労働者は使用者に対し、労務を提供しなかった期間の賃金を請求することはできない。
ウ 労働基準法の規定が適用される賃金請求権は、2年の消滅時効にかかる。
エ 使用者は、労働者の不法行為を原因とする損害賠償債権を自動債権として、労働者の賃金債権と相殺することができる。
オ 就業規則に定める労働条件と労働協約に定める労働条件が抵触するときは、就業規則の定めが優先する。
<以下5問記述式>
15−36
次の文章を読み、文中の「A」(漢字1字)として正しいものを記入しなさい。
日本国憲法の英訳(昭和21年11月3日英文官報)によれば、第29条第1項は、
The right to own or to hold property is
inviolable.
であり、41条は
The Diet shall be the highest organ of state power,
and shall be the sole law-making organ of the
State.
とされている。この両者の日本国憲法正文を比べてみると、「A」という1文字だけが共通していることに気がつく。rightとpowerが日本語の上では同一視されて怪しまれないという事実は、日本人の法観念のありようを示唆しているようにも思われる。
15−37
地方自治法の次の諸規定を参考にし、これから推定される新地方自治法において新設された制度(第252条の17の2)について、下記の「A」「B」に該当する語(漢字各2字)を記入し、その名称(条文見出し)を完成させなさい。
○ 旧地方自治法第153条
@ 略
A 都道府県知事は、その権限に属する事務の一部をその管理に属する行政庁又は市町村長に委任することができる。
B 略
○ 新地方自治法第2条
@〜G 略
H この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
一 略
二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第2号法定受託事務」という。)
○ 新地方自治法第
252条の14
@ 普通地方公共団体は、協議により規約を定め、普通地方公共団体の事務の一部を、他の普通地方公共団体に委託して、当該普通地方公共団体の長又は同種の委員会若しくは委員をして管理し及び執行させることができる。
A 前項の規定により委託した事務を変更し、又はその事務の委託を廃止しようとするときは、関係普通地方公共団体は、同項の例により、協議してこれを行わなければならない。
B 略
「A」による事務処理の「B」
15−38
次に示す条文(行政不服審査法第1条第1項)中の「A」(漢字4字)、「B」(漢字2字)に該当する正しい語を記入しなさい。
「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによつて、簡易迅速な手続による国民の[A]の救済を図るとともに、行政の[B]な運営を確保することを目的とする。」
15−39
行政書士法に関する次の記述中の[A]、[B]に、それぞれ漢字を含む5字で、該当する用語を記入しなさい。
日本行政書士連合会と行政書士の関係は、行政庁と私人の関係ではないが、行政書士の利益を保護するため、「A」については弁明の機会が与えられ、かつ総務大臣に対し審査請求をすることができる。他方、都道府県知事により行われる「B」等は行政庁の処分であり、聴聞など行政手続法の適用を受ける。
15−40
次の記述中の「ア」(漢字6字)、「イ」(漢字3字)に、適当な語句を記入しなさい。
最高裁判所は、「A所有の甲土地をAがBに譲渡したが、B名義の所有権移転の登記が行われていない状況で、当該甲土地をAがCに譲渡しC名義の所有権移転登記を経由していても、Cが「ア」である場合には、BはCに所有権者であることを登記なしに対抗することができる。しかし、当該甲土地をCがDに譲渡しD名義の所有権移転登記が行われた場合、Bは、Dが「ア」でない限り、Dに対しては所有権者であることを登記なしには対抗できない。」という見解に立っている。上記の最高裁判所の見解は、転得者であるDとの関係では、「ア」であるCにも、Aから「イ」が移転しているとの考えを前提としたものといえる。
15−41
次の下線部の漢字表記で誤っているものはいくつあるか。
15−42
ア〜オのうち、次の文章でいう意味の「非言語によるコミュニケーション」にあたるものを組み合わせたのは、1から5のうちどれか。
コミュニケーションとは「発信者と受信者の間の意図的な情報の受け渡し」であるとしたとき、そこには言語によるものと非言語によるものがあり、日常的にはこの両者を使いながらコミュニケーションがおこなわれている。特に親しいものの間では、非言語の部分の比重がかなり高いといわれている。
ア 赤ちゃんが、母乳を飲んだ後で満足して寝ているときにみせる笑顔
イ 日頃の親密な関係により理解できる言外の微妙なニュアンス
ウ 出来事に対して、笑いを共有したことで、お互いの類似性に気付く
エ 職場の同僚へ話しかけるときのイントネーションや響き、強弱など
オ 携帯電話、インターネットでのメールによるメッセージの交換
15−43
次の文章の主旨と合うものは1から5のうちどれか。
本来、自然とは非常に多数の種が複雑な関係をもって共存しているものである。それが、たった一つの種にすぎないヒトによって大幅にかき乱され、生態系の構成が世界各地で極端に単純化しつつある。特に熱帯多雨林には、膨大な種類の多様な生物が生存してきたが、今日その実態をほとんど知られることもなく、各地で森林まるごとが絶滅するようなこともおこっている。個々の生物種はどれも長い歴史の進化を背負った存在であり、ひとたび絶滅してしまったら決して蘇ることはない。それゆえ、わたしたちは子孫のためにも自然を保護する必要があるのだろうし、もうこれ以上生物を絶滅に追い込んではならないだろう。
ところで、私は自然保護の原点は、ありのままの自然の中身をより多く知る努力をすること、そして、その中から科学的論理を引き出すことであると思っている。未知のものを解明しようと努力することで、そのものの大事さがわかってくると思うからである。かわいそうだから、惜しいから、きれいだから、懐かしいから、かわいいからといったような感情から発した運動も大いに自然保護の効力を発揮しよう。しかし、そのような感情に立脚する論は、ときに他者を説得する力強さに欠ける場合がある。野外の自然のなんたるかを、現場に踏み込んで探求する努力があってこそ、他者を説得する論理が出てくることであろう。自然保護を考えずに無神経に開発を進めるような人々に対しては、こうした実地研究を踏まえた科学的な論理こそが、有効な反駁の武器となるのではないだろうか。 (出典 松本忠夫「生体と環境」)
15−44
ア〜キの文は、一連の文章をバラバラにしたものである。正しい順序にしたとき、3番目と6番目になる文の組合せはどれか。
ア そのとき重要なことは、実験や測定の条件を変えることにより、必要な情報を取得できることである。
イ そこで、天体現象を理解するのに十分な情報を集めるには、何をどのように測定するかが大きな問題となる。
ウ 地上の物質や現象を調べる場合には、その物質や現象を直接に測定したり、現象を実験的に再現することによって、対象とする物質や問題となる現象から定量的なデータを取得することができる。
エ そこで、観測はもっぱら可視光線で行われ、「目に見える」宇宙のデータが蓄積され、「見える」宇宙が理解されてきた。
オ ところが、天体を対象とするときは、一方的に伝達される情報を受動的に測定するしかない。
カ 歴史的にそうした制約が少なかったのが、可視光線で観測をすることであった。
キ 天体の発するすべての情報を集められると申し分ないわけだが、現実には、観測や測定の技術的な制約から限られた情報しか集められないことが多い。
(出典 江里口良治「宇宙の科学」より)
3番目・6番目
1 イ オ
2 カ エ
3 ア キ
4 キ ウ
5 オ カ
15−45
次の文章の主旨と合わないものは、ア〜オのうちいくつあるか。
言葉と実態のズレは、いつの時代にも生じている。言葉がひとたび生まれると、その時点において、意味が確定する。いや、ある実体に対して一定の意味が確定されるために、その実体に言葉がかぶせられるわけだ。だが、その実体は時とともに変化し、つねに流動する。そこで、ある時間が経過すると、言葉が実体から置き去りにされることになる。言葉と実体がズレるのだ。
ただ、「現在」について指摘できるのは、こういった時のもたらす普遍現象としての言葉のズレばかりではない。それだけなら、「現在」にあまりに多くの「死語」が生じている原因を説明できない。
たとえば、現代になお使われている言葉、「故郷」(それに類する「帰郷」、「望郷」、「郷愁」)、「村」(それに類する「共同体」、「田舎」、「地方」)、「母」、「大衆」、「革命」、「転向」……など。それらの言葉は、ほとんど“根”を失っている。近代人が「故郷」としての「共同体」から「根こぎ」にされ、帰りたいけれど帰るところがない故郷喪失者だったとすれば、そういった<近代日本>の歴史過程で意味を確定された言葉も、いまや「根こぎ」されている。
とすれば、それはいずれ「死語」と化すしかない。もちろん、「死語」となっても、言葉それじたいは残っている。たとえば、わたしはさきほど、日本の近代化と戦後の民主主義化、そうして、一九六四年以後の高度成長によって一貫して追求された物質的な幸福と社会的な平等が、現在の「大衆社会」をつくった、と指摘した。しかし、そこで使われている「大衆」と、そういった物質的な幸福と社会的な平等とを追い求める、いわばそれらの<欠如>のエトス(生活的な感情)によって日本の近代化を支えた「大衆」とは、微妙にちがう存在なのではないか。
日本の近代化を支えた「大衆」は、みずから農業を中心とする「故郷」を捨て、「村」に老いた「母」を残して、都会の工場に働きに出(学校に入学し)た。そのことによって、“根”としてあるべき「故郷」を哀しく低く心中に歌いつづけなければならなかった。これが、“望郷”の歌としての演歌になるわけだ。近代日本の「大衆」はその“望郷”の歌を心中に低く歌うことによって<欠如>の状態に耐え抜いたのである。その意味で、啄木の三行詩と演歌とは抒情的に見て連続しているわけだ。
それはともかく、物質的な幸福と社会的な平等とが満たされたこんにちの「大衆社会」にあっては、その「大衆」を動かしているものは、すでに<欠如>の状態のエトスではない。むしろ<過剰>の状態のエトスである。かつては、<欠如>の状態に「耐乏」し、そこから抜け出すために「一所懸命」「努力」することが、近代日本の社会を支えるエトスだった。これに対して、いまや、<過剰>の状態に「それなりに」、「満足」する事が、「大衆社会」のエトスになったのである。こういった異なったエトスをもっている存在を、ともに「大衆」という言葉で呼びつづけることができるのだろうか。(出典 松本健一「言葉の『現在』」より)
ア すべての言葉は、実体が時とともに変化することによって、死語になることから免れることはできない。
イ 「故郷」「村」「母」などの言葉は、<近代日本>の歴史過程の中で実体に対応していたが、近代人が「共同体」から離れたことで「死語」となるしかない。
ウ 「死語」とは、言葉としては存在しているが、その言葉が「現在」の社会の中では対応する実体を失っている言葉であって、使う必要がないものである。
エ <近代日本>の歴史過程の中で近代化を支えた「大衆」は、抒情的な意識を持つことで、「故郷」を離れ都会に出てくることができた。
オ 「大衆」という言葉は、過去における<欠如>と現在における<過剰>という生活感情の変化はあるものの、共に同じ「大衆」という言葉で表現できる。
15−46
次の文章に「いささか逆説的に聞こえるかもしれないが」(下線部)という表現があるが、筆者がそのように言う理由として最も適当なものは、1から5のうちどれか。
「記号」ということばで、私たちはふつうどのようなものを連想するであろうか。一方通行や進入禁止を表す道路標識、プラスやマイナスを表す数学の記号、学校とか山とかの所在を示す地図の標識〜〜人によって差はあれ、こういったものが平均的なところであろう。もし受験生であったら、「解答は所定の欄に記号で記入せよ」といったような使い方を思い浮かべるかもしれない。選択肢として挙げられている(イ)とか(ロ)、あるいは(a)とか(b)〜〜それが「記号」である。
このような例に代表される「記号」のイメージは、どう見てもあまり良いものではない。つまるところ、「記号」は何かの代用をしているにすぎないという意識があるからである。本当の意味で重要なのはその何かの方であって、「記号」はその何かをまともに持ち出す代わりに、それと一対一に対応させられたものが便宜上使われているだけだ、というわけである。(試験で「論述」式の方が「記号」式よりも十分な評価ができるという発想も、こういうことと無関係ではない。)
現代の記号論で「記号」と言う場合は、実はこの種の記号とはほとんど関係ない。この種の記号は、たぶん「記号」というよりはむしろ(あるいは「記号」の中でも)「符号」とでも呼んだ方がよいようなものである。つまり、すでに正確に規定された内容が了承されていて、ただそれをそのまま持ち出す代わりに、もっと扱いやすくてそれと一対一に対応すると了承されているものが使われているというだけのことである。いわば、本当は何かがあるという目印として、同じ場所に便宜上おかれているおはじきみたいなものと言っても良いであろう。例えば、「文化を記号として捉える」というようなことを言うことがあるが、これはもちろん、文化の諸相をこのような意味での(つまり、「符号」と呼んだ方が良いような)「記号」でもって転写してみようというようなことではない。
現代の記号論で「記号」ということが考えられる場合は、いささか逆説的に聞こえるかもしれないが、むしろ、この種の「符号」と呼ぶのがふさわしいと思われる「記号」を超えていくような営みに、何よりもまず第一に関心が寄せられるのである。(出典 池上嘉彦「『ことば』再発見」)
15−47
政治資金問題に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−48
日本の国際機構加盟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−49
次の5つの物件(a〜e)はユネスコの「世界遺産リスト」に登録されている世界遺産である。このうち、欧州連合(European
Union)の加盟国に所在するものは、いくつあるか(2003年4月1日現在)。
a オリンピアの遺跡
b バイカル湖
c ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター大寺院と聖マーガレット教会
d ベルン旧市街
e パリのセーヌ河岸
15−50
第三セクターに関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−51
介護保険に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−52
地方公共団体の財政に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−53
予算編成に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−54
日本の廃棄物処理およびリサイクルに関する法制度についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−55
次の記述のうち、ケインズ経済学の考え方として知られているものはどれか。
15−56
行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(いわゆる行政手続オンライン法)についての次の記述のうち、正しいものはどれか。
15−57
インターネットについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
15−58
電球や豆電球の明るさに関するA〜Dの記述のうち、誤っているものが二つある。誤っているものの組合せは、1から5のうちどれか。
A 抵抗の大きさが違う数個の豆電球を直列につないで一定の電流を流した場合、抵抗の小さな豆電球がもっとも明るい。
B 抵抗の大きさが違う数個の豆電球を並列につないで一定の電圧を加えた場合、抵抗の小さな豆電球がもっとも明るい。
C 起電力の同じ電池2個を並列に接続して豆電球につなぐと、電池1個のときより明るくなる。
D 抵抗の同じ電球を2個直列につないで電源に接続した場合と、2個並列につないで電源に接続した場合では、並列につないだときのほうが全体的に明るい。
15−59
連続する三つの自然数がある。そのうち最大の数を二乗したものは、他の二つの数の和に66を足したものに等しい。これら三つの数の和はいくつか。
15−60
下のイメージ図のように、底面の直径と高さが等しい円筒A、直径が円筒Aのそれと等しい円球B、底面の直径と高さが円筒Aのそれらと等しい円錐Cがある。A、B、Cの三つの体積の比をあらわすものとして正しいものはどれか。
A B C 1 6:4:3 2 5:4:2 3 5:3:2 4 4:3:1 5 3:2:1 |
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